ELR2008福岡 ポスター賞の選定結果について
日本景観生態学会
ELR2008ポスター賞選考委員長 伊東啓太郎(九州工業大学)
事務局 原田圭助(西日本技術開発)
ELR2008ポスター賞選考結果について、お知らせいたします。総数179点中12点ののポスターが受賞となりました(景観生態学分野は。4点が受賞)。審査の先生方からのコメントと、受賞者の方々には、受賞にあたってのコメントをいただいておりますので、紹介いたします。
ポスター賞の選定基準は、研究の着眼点、ポスターデザイン、ポスター内での記述のわかりやすさ、です。発表数が多く、全ての発表者のプレゼンテーションを聞く時間的余裕はないため、プレゼンテーションの技術は主な選定基準とはしていません。
ポスター賞の選定にあたっては、以下の先生方にご協力頂きました。ご協力頂き、大変ありがとうございました。
・中越 信和(広島大学大学院国際協力研究科)
・原 慶太郎(東京情報大学総合情報学部)
・前河 正昭(長野県環境保全研究所)
・森本 淳子(北海道大学大学院農学研究院)
(五十音順、敬称略)
●P1-6-26 ジンリョウユリ個体群の構造と光環境
○源典子、鎌田祐輝、鎌田磨人(徳島大・工)
◎受賞理由「里山の絶滅危惧種ジンリョウユリの成長様式や生育環境といった基礎的データを地道に収集し、美しいレイアウトで表現されています。保全に向けた具体的な施業方法の提案にむけて、さらに研究を発展されることを期待します」
◎受賞者コメント「今回はじめて学会に参加してポスター発表を行い、『ジンリョウユリ個体群の構造と光環境』でポスター賞をいただくことができ、嬉しく思います。指導してくださった先生や調査を手伝ってくれた研究室の皆にはとても感謝しています。更に本研究を発展させ、より具体的なジンリョウユリの管理手法を提案できるよう努力していきたいと考えています。また、今後は、絶滅危惧種の保全や自然環境再生、その維持管理など、地域の自然環境保全に役立つ研究をおこないたいと思います。」
●P1-7-2 農地帯の森林における樹洞木の分布およびエゾモモンガによる冬期のねぐら利用
○勝又聖乃、赤坂卓美、中村太士(北大・農)
◎受賞理由「樹洞とエゾモモンガの環境選択について、わかりやすくデータが整理されていた。結論も非常に明確で、わかりやすい。」
◎受賞者コメント「この度の受賞は、本研究を進める上で大変な励みとなりました。また、発表の際は多くの方々からご意見やご指摘を頂くことができ、本研究の内容を少し異なる視点で改めて見直す貴重な機会となりました。この場をお借りして感謝申し上げます。樹木のライフサイクルが長い分、樹洞木の管理には長期を見据えた計画が必要です。農地帯のように森林が減少している景観でも、樹洞利用者の生息場所の質を維持していくための管理指針を少しでも提言できるように、一つ一つ課題に取り組みたいと思います。また、北海道標津郡で調査を行った際は、地域の皆さんとの交流も大変すばらしい経験となりました。成果がまとまったら何かの形で地域にも発信できたらと思っています。」
●P2-6-34 環境学習を目的とした環境デザインと子どもの行動に関する研究
○大石悠乃(九州工大院・工)・伊東啓太郎(九州工大・工)・真鍋徹(北九州市自然史・歴史博)・藤原勝紀(放送大学京都教育センター)
◎受賞理由「学校ビオトープをランドスケープとしてとらえ、ランドスケープ・エレメントと子ども達の(遊び)行動との関係を検討した研究で、興味深い。今後、子どもの遊びに適切な配置と生きものにとって適切な配置との関係など検討頂けると、さらに深化するものと思った。」
◎受賞者コメント「この度は、ポスター賞を頂き誠にありがとうございます。今回のELR2008福岡大会では、様々な分野で研究を行っている方々から貴重なご意見を頂くことができました。また、現代において自然環境と人間の相互作用を考察し、環境デザインを行う意義を再認識する良い機会となりとても有意義な時間を過ごすことができました。ポスター賞を受賞したことは、私にとって喜びであり、研究への励みとなっています。今後は小学校ビオトープにおいて、子どもたちからのビオトープ利用などの聞き取り調査を行い、環境デザインの提案を行いたいと思っております。最後に、研究について数々の助言をくださった指導教官の伊東啓太郎准教授に深く感謝します。」
●P2-7-14 全国レベルでの流域区分に基づく景観構造の把握
○増澤直、伊勢紀、濱野繕彰((株)地域環境計画)
◎受賞理由「多くのポスターが比較的狭い場所での研究であるのに対し、本研究は日本全体を対象としているだけでなく、内容的にも充実した景観の研究であるため。全国の景観の類型化という、よい仕事であり、地域の景観の研究を始める際に参考になる先行研究となるであろう。」
◎受賞者コメント「日本における全国的な自然環境情報については、徐々に整備が進んできてはいますが、情報提供方法がわかりにくかったり、その情報精度に合致した適切な利活用方法についての提案が少ないため、有効に使われているとはいえないのが現状であると考えます。今回の発表では、国が提供しているGIS情報のみを基に全国的な自然環境や景観構造の変容について、基礎的な評価を行いました。これは自然環境評価の一断面に過ぎませんが、今後の地方分権や全国レベルでの生物多様性の保全といった日本のグランドデザインを論ずる際のベースマップとして、このような成果の積み上げと共有が重要であると信じています。その意味で、「広域的な景観評価を地図にしたこと」をポスター賞として評価していただいたことは大変光栄であり、今後も同様の研究と情報の共有を進めていきたいと考えています。