過去の会長挨拶

 
日本景観生態学会長挨拶 2020年4月

会長 鎌田磨人


2020年〜2021年度の学会長を務めます。1月に就任して、はや4ヶ月がたってしまいました。この間に、新型コロナウィルス感染症が世界に混乱と不安をもたらしています。グローバル化に起因する危機の1つです。気候変動による危機も顕在化しており、大雨による洪水災害が毎年のように発生しています。国や自治体では気候変動適応策として、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)に取り組んでいこうとしています。2020年10月に中国の昆明で開催予定の生物多様性条約COP15では、「ポスト2020生物多様性世界枠組」が採択されることとなっています。これにあわせて、我が国では「次期生物多様性国家戦略」の検討が進められています。
グローバリズムの中で激しく変動する社会において、私たちは、レジリエントで持続可能な地域社会の構築に貢献していかなければなりません。では、ポストコロナの社会はどうあるべきなのでしょうか。気候変動にどのように向き合ってゆけばよいでしょうか。生物多様性を礎として提供される種々の生態系サービスを持続的に享受していくために、どのような仕組みが必要なのでしょうか。目指すべき方向は、分散型で自律的な地域社会を再構築していくことでしょう。新型コロナウィルス感染症への対策として加速化しているテレワークは、その可能性を示しています。物や情報の流通に関するインフラが構築された今、地方で暮らしていくことに対する壁はとても小さくなっていると感じます。
私たちが考えるべきことは、複数の機能を同時に発揮することのできる生態系を、地域のインフラの核としてうまく活用してゆける土地・空間の利用のあり方です。そのために、自然地域、中山間地域、農業地域、沿岸地域、都市域等、それぞれの地域に適した生態系インフラの概念を整理・発展させ、複数の生態系サービスを同時に得てゆける生態系インフラの具体像とその配置、それを運用管理してゆける社会の仕組み、風土性を生かした実現のための具体的手法を示していく必要があります。
景観生態学会には、生態学、地理学、森林科学、緑化工学、造園学、建築、応用生態工学、土木工学、環境行政等の基盤を持つ多様なメンバーが集っています。そして、それぞれのメンバーは、それぞれの地域で、住民、NPO、行政、事業者等と密接に関わりながら研究やコンサルティングを行い、また、生態系管理のための活動を展開してきています。私たちは、それぞれの場での経験をとおして得た知識やスキル、アイディアを持ち寄り、地域の人たちと連携しながら社会のあり方を描き、関係する諸学会とともに科学・技術を発展させることをとおして、実現を目指さなければなりません。そして、「ポスト2020生物多様性世界枠組」や「次期生物多様性国家戦略」の推進力としなければなりません。
学会としては、会員間での情報共有、意見交換を今まで以上に円滑に進めてゆくためのプラットフォームづくり、若い研究者や技術者を支援する仕組みづくりを行っていきます。皆さんとともに新しい研究・活動を創出し、豊かでしなやかな、レジリエントな地域づくりにつなげていきたいと思います。そして、研究・活動成果が日本や世界のモデルとなるよう、景観生態学、Landscape Ecology、Landscape and Ecological Engineering等の雑誌や、研究大会で発信していきましょう。
景観生態学会は、役員の皆さん、各種委員会の皆さんの、ボランタリーな活動により運営されています。全ての会員の皆さんに、学会運営への積極的な参加・支援をお願いします。

 

2020年4月