JALE教科書プロジェクト

プロジェクトの期間:

2020年8月〜2022年2月

プロジェクト代表者:

鎌田磨人 日本景観生態学会会長 / 徳島大学大学院社会産業理工学研究部

出版物の内容の要約:

本書は (I)景観生態学の理論と手法,(Ⅱ)景観の構造と機能,(Ⅲ)地域社会への展開,の3部15章で構成されている.

第Ⅰ部「景観生態学の理論と手法」は,景観生態学の総論として,第Ⅱ部以降を読み進める上で必要となる基礎的な内容が書かれている.景観生態学の基本用語や基本概念(第1章),景観生態学の学問としての歴史(第2章),景観生態学の基礎理論(第3章)や空間情報の収集分析手法(第4章)が概説され,最後に,景観の形成や維持に大きく関わる「風土」の概念(第5章)が解説される.

第Ⅱ部「景観の構造と機能」では,代表的な5つの景観タイプを取り上げる.森林(第6章),農村(第7章),水辺(第8章),海辺(第9章)および都市(第10章)について,景観の特徴と景観生態学のアプローチ方法が詳述される.様々な景観タイプに特徴的な空間構造や機能,人の関わりを学ぶことができる.

第Ⅲ部「地域社会への展開」では,景観生態学の理論や成果を現実の社会に実装していくために必要な具体的手法や,制度も含めた社会の仕組みが解説される.まず,景観生態学に基づく景観のプランニングとデザインの方法論(第11章)が紹介され,これに続いて,景観に関する課題解決のための地域との協働(第12章),景観生態学の知見を活かした地域の生態系保全や復元による地域づくり(第13章),自然環境政策と生物多様性戦略における景観生態学の位置づけ(第14章)が解説される.そして最後に,本書のまとめとして,「適応」と「変革」を軸とする持続可能な社会の構築にむけた景観生態学の役割(第15章)が論じられる.第Ⅲ部の内容は,景観生態学の成果を社会に実装していくための道筋のみならず,景観生態学の今後の新たな展開を考える材料にもなる.

それぞれの章では,トピックが独立に解説されている.そして,章の中で使用されている用語の意味や内容の詳細を知りたい場合は,関連する他の章・節を参照できるように記述されているので,「景観生態学の考え方事典」のようにも使用できる.

出版の目的及び意義:

景観生態学は,複数の生態系の相互作用系として存在している景観の構造と機能を,様々なスケールを用いて空間階層的に解明し,自然の過程を活かした国土・地域計画に科学的根拠を与える学問分野である.本書では,景観は「社会―生態系」として把握すべき対象であること,地域の景観の構造と機能や,地域の人と自然の関係(風土)を明らかにし,それらを根底に持ちながら景観計画・デザインを行って社会に提示していかなければならないこと,そして,持続的な景観管理を行っていくための協働とそれを支えるガバナンスの仕組みが必要であることが解説される.これら知識は.地域の生態系を保全し,地域創生や防災に活用していくうえでかかせないものとなっている.

編集委員:

鎌田磨人  徳島大学大学院社会産業理工学研究部
石松一仁  明石工業高等専門学校都市システム工学科
伊東啓太郎 九州工業大学大学院工学府
伊藤 哲  宮崎大学農学部
今西純一  大阪府立大学大学院生命環境科学研究科
夏原由博  名古屋大学(名誉教授)
原 慶太郎 東京情報大学総合情報学部
日置佳之  鳥取大学農学部
藤田直子  筑波大学芸術系
藤原道郎  兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科/兵庫県立淡路景観園芸学校
松島 肇  北海道大学大学院農学研究院
真鍋 徹  北九州市立自然史・歴史博物館
光田 靖  宮崎大学農学部
渡辺綱男  (一財)自然環境研究センター

執筆者:

鎌田磨人  徳島大学大学院社会産業理工学研究部
原 慶太郎 東京情報大学総合情報学部
夏原由博  名古屋大学(名誉教授)
今西純一  大阪府立大学大学院生命環境科学研究科
丹羽英之  京都先端科学大学バイオ環境学部
今西亜友美 近畿大学総合社会学部
竹村紫苑  (国研)水産研究・教育機構 水産資源研究所
伊東啓太郎 九州工業大学大学院工学府
伊藤 哲  宮崎大学農学部
平田令子  宮崎大学農学部
光田 靖  宮崎大学農学部
深町加津枝 京都大学大学院地球環境学堂
内藤和明  兵庫県立地域資源マネジメント研究課
井田秀行  信州大学教育学部
増井大樹  真庭市役所産業観光部
真鍋徹   北九州市立自然史・歴史博物館
比嘉基紀  高知大学理工学部
松島 肇  北海道大学大学院農学研究院
永松 大  鳥取大学農学部
平吹喜彦  東北学院大学教養学部
藤原道朗  兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科/兵庫県立淡路景観園芸学校
岡 浩平  広島工業大学環境学部
日置佳之  鳥取大学農学部
森本幸裕  (公財)京都市都市緑化協会/京都大学(名誉教授)
橋本啓史  名城大学農学部
石松一仁  明石工業高等専門学校都市システム工学科
上原三知  信州大学社会基盤研究所
廣瀬俊介  東京大学空間情報科学研究センター
須藤朋美  九州工業大学大学院工学府
望月翔太  福島大学農学系
鈴木重雄  駒沢大学文学部
朝波史香  徳島大学大学院社会産業理工学研究部
河本大地  奈良教育大学社会科教育講座
島田直明  岩手県立大学総合政策学部
渡辺綱男  (一財)自然環境研究センター
蔵本洋介  環境省生物多様性戦略推進室
増澤 直  (株)地域環境計画/NPO法人地域自然情報ネットワーク
白川勝信  北広島町立芸北高原の自然館
一ノ瀬友博 慶應義塾大学環境情報学部
伊勢 紀  徳島大学大学院先端技術科学教育部/Pacific Spatial Solutions (株)

webページ:

https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320058347