会長 伊東啓太郎
2024-2025年の会長を務めることになりました、伊東啓太郎です。景観生態学会には、学生の頃から大変お世話になってきました。この2年間を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
景観生態学会は、歴代の会長、役員ならびに会員のみなさまのさまざまな貢献のもと、発展してきました。これまで、日本各地での国内学会(JALE)、関連する国際学会(IALE)やICLEEといった国際会議などを通して、国内外での研究や交流が進んでいます。私が会員となったのは、景観生態学会(当時国際景観生態学会日本支部、沼田真支部長)が設立された1991年で、当時、自身は、森林生態学とランドスケープ計画の研究に取り組みながら、さらに興味を持ち始めていた景観生態学という新しい学問の世界に、とても新鮮な気持ちで参加(会員番号05番)させていただいたことをよく覚えています。論文や教科書を執筆されている先生方と直接お話できることは本当に有り難く、時に研究の方向に行き詰まる大学院時代の大きなモティベーションとなりました。
時代は移り、私たちはこれまで経験したことのないコロナ禍のなかでの異例ずくめの世界を過ごし、現在(2024年)は、世界的な気候変動、国際紛争が顕著化しています。私たちはいま、この国内外の情勢に対応してゆく必要があります。学会としての大きな使命は、人類の生活基盤である生態系を含めた景観を守りながら、その恵み(生態系サービス)を持続的に活用できる世界を形成してゆくことだと思います。具体的な取り組みのひとつとして、国や自治体と連携した気候変動適応策、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)があります。特に日本では、2060年には人口が3/4まで減少することが予想されています。私たちは、このような情勢を考えながら、さまざまな社会課題に取り組んで行くことが求められています。
紛争や災害が起こった場合、往々にして世界は困難な方向に動いていきますが、一方で人々の豊かな生活のためには、美しく豊かな風景や芸術を後世に残して行くことが大切だと考えます。そのためには、景観生態学のもう一つの重要な軸である地域の風土を考慮したデザインについての地に足をつけた探求や実践が求められます。景観生態学会の会員には、生態学、地理学、森林科学、緑化工学、造園学、建築、応用生態工学、土木工学、環境行政等の専門家や若手の研究者がおられます。この多様なバックグラウンドを持つ方々と建設的なディスカッションや協働プロジェクトを展開することができる場、それがこの景観生態学会だと思います。
地域に残る伝統知や先達の方々の経験と知の集積、プロジェクトやフィールドワークによって得られる経験とその魅力を、これから景観生態学を学ぼうとする人々にどのようにすれば伝えてゆけるのか。このことについても、私たち一人一人が、そして学会として取り組んで行くことが重要だと考えます。景観生態学、Landscape Ecology、Landscape and Ecological Engineeringなど学術誌での発信と交流、そして国内外の大会で直接お会いしながら、豊かで大きな器としての景観生態学会をつくっていきましょう
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2024年